夫婦二人でのんびりお店を切り盛りしながら過ごしたい

深川市で●●農園を経営するY氏は、「60歳になったら引退し、やりたかった飲食業にチャレンジしてみたい」ということを目標に、早くから具体的なプランを立てておられました。50歳代後半頃からお店の土地候補を決めます。奥様も元々飲食業出身の方だったことから「夫婦二人でのんびりお店を切り盛りしながら過ごしたい」と引退・移住を楽しみにされていたそうです。

農家の業績は堅調でしたが、親族は皆農業以外の仕事をすることとなり、当初、Y氏は社員による事業承継を考えていました。候補となる人材もいたようです。しかし、その人が株を買い取る資金の調達、個人保証の問題などをクリアできず、社内承継は実現に至りませんでした。

農家の業績は堅調でしたが、親族は皆農業以外の仕事をすることとなり、当初、Y氏は社員による事業承継を考えていました。候補となる人材もいたようです。しかし、その人が株を買い取る資金の調達、個人保証の問題などをクリアできず、社内承継は実現に至りませんでした。そこでY氏が選んだのが、M&Aによる事業承継。良い買い手が見つかれば事業がそのまま承継され、社員の雇用を守ることができるし、さらなる事業の発展も望める。自分は安心してリタイアすることが可能で、売却したお金をお店を始める資金にあてることもできる。誰に迷惑をかけることもない――M&AはN氏にとって、最も妥当かつ合理的な選択肢だったのです。

Y氏は引退後、株の売却代金で新居をかまえて念願の飲食店を始め、セカンドライフを楽しんでおられます。一方、●●農園はM&A後も業績好調で、買収した企業も社員たちの働きぶりを高く評価されているとのこと。Y氏は引き継ぎが終わってから完全に引退し、全く経営に関知していらっしゃいませんが、社員たちとの交流は続いているそうですから、今は遠くから巣立った我が子の成長を見守るような気持ちでいらっしゃるのではないかと思います。

M&A成功のポイント

成功のポイントは言うまでもなく、Y氏が早くから事業承継対策に取り組んだことにありますが、なぜY氏は後継者問題を先送りにせず、早期に解決することができたのでしょうか？

いろいろな理由が考えられますが、最大の要因はセカンドライフについて具体的なプランがあったことではないかと思います。創業社長にとって、わが子のように大切に育ててきた農家を手放すのは、とても寂しいものです。いずれ引退しなければならないとわかっていても、農家の経営から離れることなどできないと考え、まだまだ皆を引っ張っていかなければという責任感も手伝って、なかなか決心がつかないのが普通だと思います。

仕事ひとすじで、　「引退してからの自分が想像できない」という経営者の方は多いですが、その考えを切り替えないことには、事業承継の問題に向き合うことはできません。コツはセカンドライフを具体的に思い描いてみること。「趣味もないし、引退してもやることがない」と口にしていた方も皆さん、実際に第一線を退くと、社長時代にはできなかったことをして、セカンドライフをエンジョイしていらっしゃいます。